スノーピアサー

「地球温暖化に抗う人類がとった行動は、地球をまるごと冷却することだった」
衝撃的かつ、実世界のリアルな問題への問いかけを含んだ出だしで始まる作品です。
冷却実験に失敗し、あらゆる生命が絶滅した地球にわずかに残された人類は、永久に止まらないエンジンを最前列に載せた長大な列車「スノーピアサー」に乗り生きてゆくことになります。

乗客にとって、その列車こそが世界のすべてであり、かつて生命であふれていた地球の縮図となっています。
まともな食事も与えられず、尊厳を奪われ虐げられ続け、ようやく体を横たえられるだけのスペースが与えられた「最後尾の住人」に対し、先を行く前列部に居住する「選ばれしものたち」は、狭い列車内にもかかわらず、かつての地上での生活と同等の贅沢な暮らしぶりが描かれています。

そんな生活の中、主人公をはじめとする最後尾の住人たちは前列部の住人となるべく、長い時をかけ、綿密な計画を立て、実行の日を待っているのです。

列車は車両ごとにセクションに分かれており、各セクションごとの役割を遵守することで、この長大な世界を守っています。
その役割を放棄すること、管理すること。この二つがストーリーに大きく関わってくるポイントとなります。

そして、この作品のキモであるセクションの描写は見事の一言ではすまないものがあります。
居住区、工場区、生産区、娯楽区、そして列車の命であるエンジンを載せた最前列。

スピーディに切り替わりながらも、緻密に描かれた箱庭のような世界は、絶妙なリアルさと凄まじいまでのファンタジックさを併せ持っています。
「ありえない」と思いながらも、「ありえてしまう気がする」と思わせるだけのクオリティです。

ストーリーは一見すると、単純な下克上を狙ったものだと思っていました。
しかし、主人公たちが最前列に来るまでに取った行動すべてが、この最前列で集約します。
台詞、アイテム、人間関係。この三つの鍵がそろった時、主人公はすべてを知ることとなります。
そのカタルシスは相当で、作品を見ながらヒヤリとする胸を押さえてしまいました。

終始暗い世界で描かれた物語は、最後に恐ろしいまでの純白に包まれます。
生命が絶滅した世界へ差し込む希望の光の色にも似ていて、非常に不思議な感情を覚えました。
本作品にはアクションシーンもふんだんに盛り込まれています。
しかしそれ以上に、予告編からは感じ取りきれなかった、環境と人類への問題提議と人としての尊厳を考えさせられる映画でした。

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